「そもそもリソース管理って何?」とか「リソース管理って難しそうだし、時間もないし、効果が実感できないんじゃないの?」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、リソース管理は非常に重要で、ある調査によると、中小企業の約7割がリソース管理に課題を抱えていることがわかっています。
そして、リソース管理を徹底した企業は、そうでない企業に比べて利益率が20%向上するというデータもあります。
ですので、この記事では、リソース管理の重要性、効果的な方法、そして管理業務全体を効率化するためのヒントをご紹介していきます。
リソースとは?
●リソースとは何を意味するのか?
リソースは「資源」を示す用語で、ビジネスシーンでは、経営や事業、業務において必要な資源全般を指すことが多く、 資源は物だけでなく、人材、資金、時間、情報など、幅広い対象を含みます。
”リソース管理”とはそれら全ての資源を適切に管理し、効率的に利用することを指します。
リソース管理の重要性
リソース管理は、とくにプロジェクト管理やビジネス運営において非常に重要で、成功に直結する要因が多く、とくに、リスク管理という観点から、下記のような理由で重要視されています。
リソースの最適な配置と利用
リソースの管理は、必要なリソースを適切なタイミングで確保し、最適に利用することを目的としていて、これにより、プロジェクトや業務の進行がスムーズになり、リスクが減少します。
例えば、必要なスキルを持った人材を適時に配置することで、技術的な問題が発生するリスクを軽減できます。
リソース管理の中では『人材』のリソースに該当します。
コスト管理と削減
リソースの適切な管理はコストの最適化にも繋がります。
予算内でリソースを効率的に利用することで、コスト超過のリスクを回避できるうえ、無駄なリソースの削減にもつながり、全体のコストを抑え、財務リスクを軽減させます。
コスト管理が適切に行われていないと、最悪の場合、運営を続けていくことができません。
リソース管理の中では『資金』や『資材』に該当します。
リソースの可視化でリスク回避
リソースの可視化を通じて、リソースの使用状況や残量を常に把握することができます。
これにより、リソースの不足や過剰を事前に検知し、早期に対応することが可能になります。
予期せぬリソース不足によるプロジェクトの遅延などのリスクを未然に防ぐことができます。
データ管理による計画と予測精度向上
過去のリソース使用データを分析することで、今後のリソース需要をより正確に予測できます。
これにより、プロジェクト計画の精度が向上し、計画通りに進行しないリスクを減少させることができます。
プロジェクトにおいては、リソースの適切な管理が成功率を高めます。
必要なリソースを適切なタイミングで確保し、計画通りに進行することで、プロジェクトの遅延や失敗のリスクも減少させることができます。
これは、リソース管理の中でも『情報』のリソース管理に該当します。
以上のような理由から、リソースの管理がリスク回避に最も効果的であり、リソースの最適な利用と可視化、計画の精度向上、コスト管理、リスク対応力の強化、そしてスケジュール管理の改善など、多岐にわたり重要視されています。
また、リソース管理を徹底することで、組織全体のパフォーマンスと競争力を大きく向上させることができます。
リソース管理で管理業務全体の効率化
リソース管理により、管理業務全体を効率化するためには、効果的なリソース管理方法を導入する必要があります。
それでは、その具体的な方法を下記にていくつかご紹介します。
リソースプランニングとスケジューリング
リソースプランニングとスケジューリングは、プロジェクト管理において重要なプロセスであり、プロジェクトの成功に欠かせない要素の一つです。
リソースプランニング
リソースプランニングとは、プロジェクトを遂行するために必要なリソース(人材、設備、資材、時間、情報、予算など)を計画し、適切に配分するプロセスです。
まずは、プロジェクトの全体像を把握するところから始めます。
プロジェクトによって規模が違ったり、必要なスキルや物も異なりますので、そういった点をまず把握する必要があります。
そして、忘れてはいけないのが資金です。
必要な人や物を揃えるためには資金が必要不可欠ですので、どれだけの予算があるのかも把握する必要があります。
把握ができたところで、何がどれだけ必要なのかをリストアップしておきましょう。
視覚化することで、不足しているものを認識しやすくなります。
もし、必要なものが不足しているようであれば、予算内で新たに手配しなくてはなりませんので、社内外双方で手配しましょう。
ただし、予算は全て使っていいわけではなく、なるべくローコストで収まるように上手く利用することが重要です。
スケジューリング
スケジューリングとは、プロジェクトの各タスクやアクティビティの実施時期を計画し、具体的な時間枠を設定するプロセスです。
スケジューリングの主な目的は、プロジェクトの進捗を管理し、計画通りに完了させることです。
まずは、プロジェクト全体を通して、どれだけのタスクが発生するのかを明確にします。
次に、タスクの依存関係を特定する必要があります。
依存関係とは、例えば、「このタスクをクリアしないと、次のタスクに進めない」といったように、業務が連動する関係にあるという意味です。
この依存関係の他にも、時間制限が設けられているタスクも特定しておきましょう。
そして、この2点に基づいてタスクの優先順位を決めていきます。
ここまで出来たら、各タスクの開始日と終了日の設定、いわゆるタイムフレームを設定し、全体のプロジェクトスケジュールを作成します。
全体のスケジューリングが出来たら、そこに各タスクに必要なリソース(人材、設備、資材など)を割り当て、プロジェクトの進行状況を定期的に監視し、必要に応じてスケジュールを再調整します。
遅延やリスクが発生した場合は、迅速に対応しましょう。
このように、リソースプランニングでは、プロジェクトの各フェーズやタスクに必要なリソースを確保・計画し、スケジューリングでは、そのリソースを効果的に活用するための具体的なタイムラインを設定するといったように、リソースプランニングとスケジューリングは、相互に密接に関連しています。
データ管理と分析
データの積み上げとその分析は、リソースの利用効率を高め、問題を早期に発見・解決し、顧客満足度を向上させることができますので、リソース管理を最適化するためには非常に重要です。
積み上げて蓄積したデータは、先々でも役に立つことがあります。
例えば、前のプロジェクトと新プロジェクトを比較したときに、規模や必要なスキルが類似している場合、以前に積み上げていたデータが新プロジェクトの指標となることもあります。
その時には使いどころの分からない細かいデータなども、もし余裕があれば、積み上げておくと意外なところで役に立つかもしれませんので、積み上げられるだけ積み上げておくと良いでしょう。
データ収集と管理と行う上で、ソフトなどの自動化ツールを利用して管理や分析を行う手法もありますが、システムが不具合をきたす恐れもありますので、そういったリスクを考慮してアナログな手法も覚えておくと良いでしょう。
データの積み上げと管理
まずは、どんな情報のデータが必要なのかを選定する必要があります。
例えば、その日単日で「人を何人かけて、時間をどれだけかけたか」であるとか、売り上げの実績や顧客の情報などが該当するでしょう。
情報の選定ができたら、Excelなどの表を用いて、それぞれのデータをカテゴリー分けしながら、日々入力していくことを継続して行っていきましょう。
この時、あとで見返しても極力分かりやすいようにまとめることがポイントで、数値を入力する際には後々計算しやすいように、単位は入れないようにすると良いでしょう。
もし、単位を入れたい場合は『セルの書式設定』で単位を設定すれば、集計する際に邪魔にならずに済みます。
下図は、例としてケーキの販売数をExcelに入力したものになります。
下図を参考に、Excelで表の作成を行ってみましょう。
例の中では、1個単位の『単価』が抜けていますが、こういった細かいデータを必要とする場面も出てきますので、データ入力しておくと良いでしょう。
また、金額の入力欄に関数式などを利用すると、入力の手間を省けます。
データ分析
データ分析というのは、集めたデータを色々な角度から見て、その中に隠れているパターンやルールを見つけることです。
例えば、売り上げデータがあったとします。
そのデータを見て、どの商品が一番売れているか、どの時間帯にお客さんが多いか、どうすればもっと売り上げを伸ばせるかなどを考えることです。
具体的なデータ分析方法は、下記のような手順で進めていくと良いでしょう。
データを整理する
データの整理には、主にExcel関数やピボットテーブルなどを使用します。
Excel関数を使用する場合は、あまり複雑な関数式は使用しなくても十分だと思いますので、SUM・SUMIF・VLOOKUP(※XLOOKUP推奨)・FILTER関数などで整理してみましょう。
今回は例として、ピボットテーブルを使用していきます。
Excelファイルを開いて、データ範囲を選択し、「挿入」タブからピボットテーブルを選択します。
「ケーキの種類」という項目のみ図右下の「フィルター」という部分にドラッグ&ドロップします。
今回は項目が少ないので、これだけでデータの整理は完了です。
データを確認する
データの中にどんな特徴があるかを見ていきます。
棒グラフや円グラフなどを使って、視覚化することで傾向の違いやデータの特徴などが見えやすくなります。
先程のピボットテーブルからグラフを作ってみます。
先程と同じように、グラフにしたいデータ範囲を選択し、「挿入」タブから適切な「グラフ」を選びます。
「棒グラフ」と「折れ線グラフ」の両方を使用すると下図のようなグラフが完成します。
データから推測する
少しのデータから全体のことを考えてみましょう。
例えば、売り上げ個数が多いのに対し、売り上げ金額が安い日が何日かありますが、これは、数種類あるケーキの中で、単価が安いケーキの販売数が多かったのではないか、または、曜日によって「まとめて購入すると○○%オフ」で販売していたなど、そういった推測ができます。
実際にデータを分けて見てみましょう。
●イチゴのケーキ
●チョコのケーキ
このように、データを種類ごとに分けて見てみると、さらに様々な推測ができるようになります。
データを使って予測する
過去のデータを基にして、少し先の未来を予想します。
先程のような、データやグラフを基にどのような傾向にあるのか、この先どのように推移していくのか、来月の売り上げがどうなるかなどを予想します。
もし仮に、販売数が増加する見込みができたとします。
そうなった時に、人材は同じ人数で足りるのか、足りないのかなど、そういった予測もできます。
このように、データの中から何かしらの意味を見つけて、次に何をすればいいかを考えるのことをデータ分析と言います。
KPIの設定
リソース管理を行う上で、KPIの設定は非常に重要です。
『KPI』とは何なのかを知る上で、併せて『KGI』についても覚えておきましょう。
●KGIとは?
Key Goal Indicator(キー ゴール インジケーター)の略で、「重要目標達成指標」のことを指し、売上高や成約数、利益率などの経営達成目標。
企業の経営戦略やビジネス戦略を達成するために何をもって成果(ゴール)とみなすのかとする指標のこと。
●KPIとは?
Key Performance Indicators (キー パフォーマンス インジケーター)の略で、「重要業績評価指標」のことを指し、KGIを達成するための中間指標(中間ゴール)のこと。
KPIは、組織の目標達成状況を測定・評価するための具体的な指標であり、全体のパフォーマンス能力(生産性)を把握したり、KPIを達成するための改善点を見つける指標としても利用されます。
まずは、組織全体の目標(KGI)を把握する必要があります。
KGIはビジネスの長期的なビジョンに基づいて設定されていて、例えば、コスト削減、品質向上、顧客満足度向上などが考えられます。
このKGIに基づいて、具体的なKPIを設定します。
KPIを設定する上で注意することは、KGIに関連していることで、尚且つ具体的に測定が可能なものである必要があります。
例えば、下記のような項目が挙げられます。
また、期間を必ず設定し、その期間内で必ず達成できる根拠のある目標でなければなりません。
コミュニケーションの強化
管理業務全体の効率化と最適化を図るためには、組織内のコミュニケーションも重要で、KPIやその進捗状況などを定期的に報告し合い、全員が理解していることが大切です。
定期的なミーティング
とくに、ミーティングを行うことが、コミュニケーション能力を強化し、組織全体のパフォーマンスを向上させるために非常に効果的です。
ミーティングは、チームで情報共有をする場として効果的で、一貫性を持って業務に臨むことができます。
他にも、即座にフィードバックを交換することができ、異なる視点やアイデアを共有することで、より良い解決策を見つけることができますので、問題点の早期発見と解決が可能になります。
また、定期的に集まることで、メンバーが目標に向かって一緒に進んでいるという実感が得られ、モチベーションも向上します。
目的を明確にする
ミーティングを行う上で、具体的なポイントですが、まずは何のためにミーティングを行うのか、目的を明確にする必要があります。
例えば、進捗報告、問題解決、情報交換、新しいアイデアのブレインストーミングなどが挙げられます。
アジェンダを作成する
「アジェンダ」とは英語で「予定表」という意味で、会議を円滑に行うために、ミーティングの議題を事前に作成し、参加者に共有しておくと良いでしょう。
これにより、ミーティングが効率的に進行し、無駄な時間を減らせますし、参加者各々議題に対して準備ができますので、より効果的なミーティングを行うことができます。
議事録の作成
ミーティングの内容や決定事項を記録し、全員に共有します。
議事録を作成しておくことで、後で確認しやすくなり、次のステップに進む際の参考にもなります。
議事録を作成する際は、アジェンダを基にすると作成しやすいので参考にしてください。
また、万が一聞き逃してしまった時のために、ボイスレコーダーなどの録音機器を使用しながら、ミーティングに参加すると良いでしょう。
ただし、場合によってはコンプライアンス違反になる恐れもありますので、事前に使用可能か上司に確認しておくことをおすすめします。
ミーティングは、週次、月次といった頻度で行うと良いでしょう。
情報共有プラットフォームの活用
社内SNSやチャットツールを活用して、情報の共有とコミュニケーションを図るのも良いでしょう。
とくに、中でも『LINE WORKS』は扱いやすいのでおすすめです。
LINE WORKSは、企業向けのクラウド型ビジネスチャットツールで、2023年1月時点で日本国内での導入社数は約43万社、利用者数450万ユーザーの実績を誇るチャットツールです。
例えば、上司にすぐにでも報告したいけど、会議中のため報告ができないなど、そういった際に一時的な報告として活用することができます。
ただし、チャットツールのみで終わらせないように注意してください。
あくまでも緊急の一時的な報告に過ぎませんので、必ず後から口頭で報告することを心がけておきましょう。
継続的にチェック(モニタリング)する
リソース管理は、一度きりの作業ではなく、継続的にモニタリングし、必要に応じて調整することが求められます。
環境の変化や新たな課題に対応するために、KPIや管理プロセスを見直し、改善し続けることが重要です。
PDCAサイクル
そこで、最も効果的なのがPDCAサイクルを回していくことです。
●PDCAサイクルとは?
Plan(計画): 目標を設定し、達成するための計画を立てる
Do(実行): 計画に基づいて実際の活動を行う
Check(確認・分析): 実行した活動やその結果を評価し、確認・分析する
Action(対策・改善): 評価の結果に基づいて、計画や実行方法を改善し、次へ繋げる
この4段階の動作を繰り返して業務を継続的に改善する方法のこと
このサイクルを繰り返すことで、継続的にプロセスを改善し、目標達成に向けた効果的なリソース管理とKPIの設定が可能となります。
具体的な例として、下記を参考にしてみてください。
PDCAサイクルの例
※新製品の市場投入を例にした場合
Plan(計画)
Do(実行)
Check(確認)
Action(改善)
これらのステップを踏むことで、効果的にリソース管理を行い、全体最適を実現することが可能となります。
まとめ
このようにリソース管理は、限られた資源を無駄なく使うために非常に重要な工程です。
目標を確実に達成でき、仕事の進み具合が良くなりますし、さらに、チームのやる気も上がり、働きやすい環境が整い、結果として、全体の成果が向上しますので、ぜひ実践してみてください。
では、また。